地獄でなぜ悪い

チラシの裏みたいなもの

【映画】劇場

映画館とAmazonプライムビデオ同時に公開ってことで「劇場」観ました。

 

劇場 : 作品情報 - 映画.comwww.google.co.jp

 

先に言うと、クソほど号泣した。

ゲームする旦那の横で観てたら「え…号泣するほど…?」って引かれるくらいには泣いた。

 

以下、ネタバレ。

 

 

  

 

 

いつものことながら、原作は読まずに観ました。

 

わたしだけかもしれないけど、さきちゃんにすごく感情移入してしまって。過去、割とクズと付き合ったりすることが多かったので(今は多少更生したけど旦那も勿論クズ出身)どんなに献身的に尽くしても報われない姿に自分を重ねたり、かといってさきちゃんのように純粋無垢でいつも天使の微笑みで彼を見守るようなことはできなかった自分の過去を悔やむ思いや、さきちゃんのような彼女でありたかったと願う気持ちもあったり。

 

また、永田をとことんクズに描いているんだけど、そのクズっぷりに普通の人は「そんな男と付き合わなければいいのに」と言うのかもしれない。でも、そうは言い切れない魅力みたいなものを感じる演出。この感覚は、世のクズ男と縁のある女性ならば共感してもらえるはず。

 

さきちゃんが「全然よく分からないよぉ〜」と前髪を触りながら笑うのも、同じ気持ちからだと思う。クズだけど、突拍子もないことを言ったり、他の人にはない魅力があるのよ。それも、さきちゃんの前だけで。だからさきちゃんは「一番すごいって知ってる」と言うんだろうな。この「一番」は「(さきちゃんが)一番(永田のことを)すごいって知ってる」とも「(永田のことを)一番すごいって(さきちゃんが)知ってる」とも取れるな。

 

さきちゃんが精神的に不安定になって、酒を飲まないとやっていけなくなってキレるシーン。「一緒に住めるかなぁと思ってたのに、ひとりで住んじゃうしさぁ。適当に遊んでいてもいいよ、でも、ここに帰ってくるから許せてたんだよ」って泣きながら訴える。松岡茉優ちゃんの演技よ。うわぁぁ〜〜あの頃の自分〜〜!!!!みたいなのも爆発して、この辺からめちゃくちゃ泣いちゃった。

 

原作を読んだ人は「さきちゃんの真の天真爛漫さを感じない」みたいなレビューの人もいたけど、わたしは原作読んでないから思うのかもしれないけど、それでいいと思う。彼の前で天真爛漫で純粋無垢な女の子を演じている、さきちゃんという子の役と思うと。そう考えたら「もう27歳だよ?」っていうシーンも「地元の友達はみんな結婚しているのに、自分は結婚もできず、これからもあなたのために純粋無垢な女の子を演じ続けないといけないのか?」という意味にもとれる。

 

実家から小包が届いたシーンで、さきちゃんが何気なく「お母さんがせっかく食べ物送っても知らない男に食べられると思ったら嫌だって言ってた」なんて話すシーン。永田は「さきちゃんのお母さん嫌い」って言うけど、このシーンすごく深いなと思っていて。

 

さきちゃんは、もしかしたら親に永田のことを紹介したかったのかもしれない。「知らない男に」と言っているから、知っている男になれば、お母さんも嫌じゃないのかもしれない。それに、ただお母さんとの会話をたまたま永田に話だけかもしれない。それなのに、永田は怒る。これは、二人の育ちの違いからくるものもあるんだろうなと。永田は親から小包が送られるような親子関係にないし、親から特別可愛がられている訳ではない。でも、さきちゃんは違う。親から小包がしばしば送られてくる。20歳を過ぎた今も愛娘を心配して食べ物を送る、そんな親からしたら、大事な娘が顔も知らない男と同棲していていい気持ちはしないはず。でもきっと、永田にはその気持ちは分からない。こういう男女のズレみたいなのはどんなカップルや夫婦にもあるんだろうなと感じた。

 

最後30分くらいのラストスパート、長台詞のテンポと感情の表し方がすご〜〜〜く良くて、そこまでの永田とのギャップが本当に素晴らしかった。正直、山崎賢人くんあんまり演技が上手と思っていなかったんだけど(失礼)、この演技がめちゃくちゃ良かった。そして、今更取り繕っても遅いんだけど、すごく優しくなって口数が増える感じ。この辺、自分と重ねる男性もいるんじゃないかなとも。(余談だけど、わたしの付き合ってきたクズ男はみんなこうでした)

 

最後の、さきちゃんと過ごしたアパートが劇場に変わる演出が、驚きの展開でお芝居を観たことがある人だったらグッときたんじゃないかなぁ。「演劇で出来ることは現実でも出来る」あれをしよう、これをしようって目を輝かせながら話す永田を観て、ごめんねごめんねって泣きながら観劇するさきちゃん。涙腺崩壊です。

 

一見、よくある設定のよくある話だけど、妙に自分の実体験と重なるようなリアリティがある。一番好きだなと思ったのが、共依存的な恋愛ストーリーなのに、全くラブシーンがないところ。キスシーンとかムズムズしてしまうんだけど、二人がお互いを必要としていることをラブシーンなしで表現する。演劇って感じよね。

 

久しぶりにブログ書きたい…!と思うほど良かった映画。いろんなところでレビュー読んだら「全く理解できない」みたいな酷評もあったんだけど、もしかしたら、こういう類の恋愛をしてこなかった人、クズ男を好きになったことのない人、演劇に触れたことのない人はあまり理解できないのかな。わたしはどれも経験してきたので、ものすごい感情移入して観てしまった。

 

Amazonプライムビデオで観てしまったけど、映画館で観たらより劇場を感じられる素晴らしいラストになるだろうなぁ、と思いました。コロナ渦で暇を持て余し過去の映画も色々観た上半期だけど、今のところ今年観た映画で一番いい映画かもしれない。ラストのところ、泣きすぎて山崎賢人くんのセリフ全然入ってこなかったし、またじっくり観たい。